中国政局に火をつけた「天津爆発」
「人為的」事件の可能性が濃厚
2015年9月号
八月十二日深夜、中国北部の金融・貿易拠点、天津市で大爆発が起きた。炎が夜空を焦がし、気象台の地震計は最大マグニチュード二・九の揺れを記録した。その直後から中国のネット世論の関心は政局の行方について「流言、天に満つ」の状態になった。
天津といえば六月、習近平国家主席の最強の政敵、周永康・前党政治局常務委員に無期懲役の判決を下した裁判所がある。爆発の時と所と人が、あまりにも習近平の権力中枢を直撃する構造なのだ。独裁権力の頂点に上り詰めた習近平の強運がついに下り坂に入ったと思わせる政治的衝撃が広がった。
時まさに「北戴河会議」の終盤だった。天津の北、約三百キロにある河北省の高級保養地、北戴河に習近平をはじめ共産党指導部、党軍長老たちが集まる、年に一度の権益談合の場だ。秋の党中央委員会全体会議にかける重要人事案、次の五カ年計画案のほか、今年は中国株式市場の危機対応が加わり、習近平には厳しい環境だった。
習近平軍団の中核を直撃
爆発の翌日、劉延東副首相、郭声琨公安相が「習近平党総書記、李克強首相の命を受けて」、爆発現場の倉庫を視察した。・・・