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連載

誤審のスポーツ史 08

審判が試合を作った「夏の決勝」
中村 計

2015年8月号

 甲子園には、魔物が棲んでいる―。

 高校野球の世界でよく使われる箴言だが、これは選手だけでなく、審判にも言えるのかもしれない。

 高校野球における誤審は、それこそ星の数ほどある。だが、審判への執拗な抗議がタブーの高校野球では、大抵は問題になることもないまま忘れ去られていく。

 ただし、誤審が試合の勝敗を大きく左右した場合、まれに大きな禍根を残すことがある。そういう意味では、二〇〇七年の全国高校野球選手権大会の決勝における主審の判定は、その最たる例だ。

 この年の決勝の顔合わせは、ノーマークながら準々決勝で優勝候補の帝京高校を破るなど快進撃を続けていた公立の星・佐賀北高校と、全国優勝三回を誇る名門・広陵高校(広島県)となった。

 八回表を終えた時点で、広陵は4対0と佐賀北をリード。広陵のエース野村祐輔(現・広島)は佐賀北打線をわずか一安打に抑えていた。しかし、このまますんなりと終わらないのが、人生で三年間しかチャンスがなく、負けたら終わりのトーナメント方式を採用する高校野球の常・・・