西風 411
変わりゆく「梅田地下迷宮」
2015年8月号
「地下街の名物がなくなるたびに大阪の活気や『らしさ』が失われた気がする」
夕刊紙元記者は寂しそうに語った。大阪は地下街が発達した街だ。最大のターミナル、梅田では複数の地下街が四方八方に延び、周辺商業施設とも継ぎ目なく繫がり一大「地下迷宮」を構築している。
六月、この場所で一九四九年から営業を続けてきた立ち食い串カツの店「松葉」が退去したニュースは東京でも報じられた。
阪神百貨店の建て替えに伴って、JR大阪駅と阪神百貨店の間を繫ぐ約二百二十メートルの「大阪駅前地下道」を拡幅することになった。大阪市は一昨年三月に、地下道で道路占用許可を受けて営業していた飲食店など二十一店舗に退去を要請。拒否した五店舗が強制撤去を阻止するため仮処分申請するなど抵抗を続けていた。
この地下道は、太平洋戦争中の四二年に完成したもの。そのため壁も天井もコンクリートがむき出しの地下道だった。終戦後は外地からの引揚者が寝泊まりし地下の闇市が生まれた。これが後に縦横に張り巡らされる梅田地下街のルーツとなった。
終戦二年後には市が悪質な業者を排除するため・・・