実態は「官僚主導」の安倍政権
自民党「人材枯渇」に乗じる役人たち
2015年8月号
結党六十周年の制度疲労か、自由民主党で人材の劣化が顕在化している。メディアに圧力をかけろと鼻息を荒くした若手勉強会「文化芸術懇話会」の顚末は、その一例に過ぎない。能力のある人がいないわけではない。自民党総裁である総理大臣・安倍晋三の党運営が、人を育てる長期的視野と懐の深さを、この伝統政党から奪っているのだ。それは、族議員の衰亡という現象からも、読み取ることができる。
「官邸主導」を隠れ蓑に
安倍側近で、党政務調査会長を務める稲田朋美は、衆議院当選三回(現在は四回)という異例の若さで要職に起用されてから一カ月後の昨年十月、こんな「自民党観」を口にしている。
「私は朝八時からの部会の議論がすごく好き。当選一回と十回の先生方が一緒に忌憚なく議論し、部会の議論が党の政策を決めるのが自民党の良いところだ」
早朝から自民党本部で行われる政調の部会の伝統は健在だ。国防部会は防衛省、総務部会は総務省といった具合に、中央省庁ごとに対応した十三の部会での議論を通じ、若手はその分野について知見を深め、省庁や関連業界との人脈も太くなる。政務官、党部会長・・・