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米シンクタンクの凄まじき「劣化」

政治や富豪が操る「御用宣伝機関」に

2015年8月号

 世界最強を誇ったアメリカのシンクタンク(研究機関)が大きな危機に瀕している。米国政治の分極化の影響で、シンクタンクが政党・政治団体のプロパガンダ機関化しているためだ。政策提言力を失うばかりか、科学的論証さえおぼつかないところもある。一部は企業や富豪のカネに操られている形で、信用回復は容易ではない。  今年の夏、保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」は散々だった。連邦最高裁が、「同性婚禁止は違憲」「医療保険制度改革(オバマケア)は合憲」と相次いで、オバマ政権の政策を支持。外交面ではイラン核合意、米国とキューバの国交回復と、財団が猛反対してきた重要イベントが連続した。財団は反論にてんてこ舞いになった。  ところが、本来は財団の支持層である共和党議員からは、不満が噴出した。「ヘリテージにはうんざり」「もうあそこの出版物なんか読んでいないよ」。政治誌「ナショナル・ジャーナル」は、共和党内の議員の本音を紹介した。 「論調はヒステリックで硬直的。すっかり説得力を失ってしまった」と、在ワシントンの米国人政治記者が言う。  ヘリテージは二〇一三年、上院議員だったジム・デミントを・・・