三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

役立たずの「監査法人」

粉飾決算も脱税も糺さぬ「企業の飼い犬」

2015年8月号

 三大監査法人の一角を占めるトーマツに入社すると、まず関係法令に関する資料を就業時間の許す限り読まなければならない。ここでコンプライアンス(法令順守)の意識を徹底的に叩きこまれるのだ。トーマツ関係者が語る。 「他の大手でも同様だろうが、会計監査だけでなく企業の内部統制のコンサルティング業務をしているため、コンプライアンスには神経質なまでにうるさい業界だ」  しかし裏を返せば、監査法人の業務には、法令違反をしかねない局面が多くあることを示す。  東芝の不正会計事件では、監査を担当した新日本有限責任監査法人の責任が問われている。焦点は粉飾を看過したのか、黙認したのかだ。この問題の背後には、監査制度の形骸化と公認会計士のモラル低下がある。 ただの「お飾り」と化す  上場企業の会計監査は、クライアント企業に対する事情聴取のようなものだ。東芝レベルの大企業であれば、数十人の監査法人スタッフが会社に乗り込んで集められた書類をチェックし、企業側の担当者を呼び出し説明させる。原価計算の根拠は何か、売り上げ計上していい項目なのか―。これらは、当然のことながら単・・・