スズキを歪める「世襲」の代償
三兆円企業を私物化する「鈴木修」
2015年8月号
「一族経営」を否定してきたスズキの鈴木修会長の選択はやはり「創業一族」だった。六月三十日、自身の社長ポストを長男の鈴木俊宏副社長にバトンタッチする後継人事を発表し、一九九〇年代から同社最大の経営課題だった継承問題がようやく決着した。
しかし、会長兼CEOに居座る修氏の保有する株式は五十五万株で、発行済株式総数のわずか〇・〇九八%にすぎない。もはや「オーナーですらない」という根本的問題をはらみながら、修氏は「創業家」への異常な執着をみせてきた。議決権〇・一%で同社を一〇〇%支配する歪んだ構造。日本を代表するワンマン経営者はスズキをどこへ向かわせようとしているのか。
「力があって、やる気があって、責任を持ってやるということであるならば、誰でもいいじゃないかということです。そこにいたからやったということではありませんので。あるいは、一族だからやったという意識はございません」
修氏は俊宏氏への社長継承について記者に問われた際、こう強調して血脈の人事を否定してみせた。だが、誰がどう見ても言動は全く一致していない。
スズキに入社した頃の修氏は「俺は社長の長女の婿養子だ・・・