日経新聞「FT買収」の大きな誤算
効果乏しき「高値摑み」の重荷
2015年8月号
七月下旬、日本経済新聞社は英経済紙、フィナンシャル・タイムズ(FT)の全株式を買収して子会社化することが発表された。両社は経済紙として従来から協力関係にあったが、記事の質、記者の見識、世界的な知名度、影響力などほとんどの面で日経はFTの足もとにも及ばない。「シナジーを期待する」(日経)といっても記事交換やデジタル版ノウハウ以外には具体的にまったくみえない。日本企業のM&Aに多い「憧れの貴族令嬢を巨額の結納金で迎えた成り金」という構図がぴったりと当てはまる。
買収を伝えた七月二十四日の主要紙朝刊は扱いが分かれた。日経は社告と見まがう「日経、英FTを買収」の横見出しに、〝どや顔〟風の「経済メディア世界最大」の縦見出し。朝日新聞も一面トップで報じ、中面には「国内市場の縮小背景」という解説分析も載せた。読売新聞は一面にこそ出したものの三段と冷静な扱いだ。
実はこの扱いに各社の戦略が示されている。「電子版」という課金型ウェブサイトで先行した日経とデジタル版をなんとか軌道に乗せた朝日は有料デジタル版を成功させたFTに強い関心を持っている。特にFTが昨年打ち出した「デジタル・ファー・・・