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連載

日本の科学アラカルト 59

環境・エネルギー分野で応用 日進月歩の「藻類」研究

2015年7月号

 三月、博物学や民俗学への貢献が認められた人物に贈られる「南方熊楠賞」の今年の受賞者が発表された。選ばれたのは、筑波大学教授の井上勲博士。一九五〇年、沖縄県に生まれた井上氏は、一貫して藻類についての研究を続け、分子生物学、分類学といったあらゆる角度で多くの業績を残したことが評価された。  近年、ある種の藻が燃料となる物質を産み出すことが注目されている。そもそも藻類は、長らく植物に分類されていた時代があった。「体内で光合成」を行うということが最大の理由だが、後に独立した分類で扱われるようになった。  一口に藻類といっても種類は多岐にわたる。真正細菌類である藍藻(シアノバクテリア)や、珪藻などの単細胞生物も藻類に分類される。また、日本人の食卓になじみ深い海藻は、多細胞生物の藻類の代表格だ。主に海水や淡水といった水中に生息するものが多いが、地中に存在する藻類もある。  十九世紀から系統立てた研究が続けられている分野ではあるが、藻類の体内メカニズムなど解明されていない部分がまだ残されている。資源小国である日本では、前述した燃料を産み出す藻類に代表されるように、有効な利用法も研・・・