中国の「電力利権」争奪戦が激化
「原発輸出大国化」の危うい舞台裏
2015年7月号
雨後の筍のごとく原子力発電所を増設させる中国で、エネルギー利権をめぐる激しい暗闘が繰り広げられている。争いの先に見据えるのは、安全とは無縁、巨利目当ての原発輸出だ。だが他国の迷惑など顧みないお国柄で、隠蔽体質は世界屈指。ひとたび大事故を起こせば、世界中が甚大な損害を被りかねない。福島第一原発事故の教訓もどこ吹く風と海外輸出に活路を求める日本とて、「原発輸出大国」を目指す中国の動向と無縁ではないのだ。
中国では今、習近平国家主席が旗を振る原発拡大路線に沿って、世界最多となる原子炉二十七基を建設する槌音が響く。その背景で一体、何が起きているのか。
今年五月、習氏の地盤である福建省福清で新たな原子炉が着工された。この新型炉は、中国が独自開発したという「華竜一号」。現在世界的に主流となっている第三世代炉で、フランスの改良加圧水型原子炉が原型とされる。
一年前に習氏は「世界最高の安全基準で速やかに沿海部に新しい原発を始める」と宣言。新型炉はこの言葉を具現化したものだ。現在、中国で稼働している二十三基の原発の出力は合計約二千万キロワット。五年後には、五千八百万キロワットに・・・