トヨタ「麻薬事件」長引く後遺症
章男「デタラメ人事」の構造的欠陥
2015年7月号
二〇一五年三月期に過去最高の最終利益をあげ、「わが世の春」を謳歌するトヨタ自動車に激震が走った。六月十八日、トヨタで渉外・広報を担当するジュリー・ハンプ常務役員が麻薬取締法違反の疑いで警視庁に逮捕されたのだ。トヨタは逮捕翌日の十九日に豊田章男社長が東京本社で緊急会見を開くなど対応に追われた。「謝罪会見嫌いの章男社長が、事件の全容が明らかになる前に自ら会見するのは極めて異例」と全国紙経済記者は驚く。が、それもそのはず、今回の不祥事は章男社長とその側近が引き起こした「人災」というのだ。
「世間をお騒がせすることになり、誠に申し訳ない」―章男社長は、そう切り出して深々と頭を下げた。ハンプ常務役員が密輸したとされるのは「オキシコドン」。日本では麻薬だが米国では医師の処方箋があれば鎮痛剤として入手できる「グレーゾーン麻薬」だ。トヨタ関係者は「ハンプ常務役員は薬物中毒者ではない。米国では合法的な麻薬成分を含む薬品を誤って取り寄せてしまっただけ」と弁明する。章男社長も会見で「捜査で法を犯す意図がなかったことが明らかになると信じる」と、ハンプ常務役員を庇った。だが、大企業の役員が赴任国の法律を・・・