中国自動車市場「崩落」の衝撃
一段と冷え込む「アジア・欧州経済」
2015年7月号
目立たない小さな出来事が大きな変化の予兆を示していることは歴史には少なくない。中国市場で絶好調を続けてきた独高級車メーカー、BMWの売り上げが五月、十年ぶりにマイナスになった。ささいで一時的な事象にみえるが、二〇一〇年に米国を抜いて世界最大となり、その後も右肩上がりの成長を続けてきた中国自動車市場に変調の空気が漂い始めたのは事実だ。世界の自動車メーカーが成長の前提としてきた中国市場が失速すれば、その打撃は世界の自動車業界や関連産業、さらに今や世界の自動車の過半を生産するアジア全体に激震を及ぼすのは間違いない。
中国の昨年の自動車販売は二千三百四十九万台と二位の米国に七百万台近い差をつけ、世界全体のほぼ四分の一を占めた。日本の四・四倍もの圧倒的な巨大市場だ。一〇年に前年比三二・四%増という驚異的な市場の膨張を経験した後、伸び率はさすがに鈍化し、一三年を除けば一ケタ台に落ち着き、昨年は同六・九%増。市場が大きくなれば成熟化は必然的といえるが、今年一~五月期は前年同期比二・一%増まで落ち込み、四月、五月は連続でマイナス。中国自動車市場が失速しつつあるのは確かだが、世界の自動車メーカ・・・