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連載

日本の科学アラカルト 58

新たな「機能性」発見相次ぐセラミックス研究

2015年6月号

 セラミックスとは、そもそもは陶器や磁器といった「焼き物」のことだ。しかし現在、セラミックスといえば陶磁器ではなく、先端素材のほうを思い浮かべる方が多いだろう。広義では、無機物に熱や圧力を加えて固めたものがセラミックスであり、機能性を持つ素材は特に「ファインセラミックス」と呼ばれる。電子部品の中に組み込まれるチタン酸バリウムや、永久磁石として知られるフェライトなど、社会のありとあらゆる場所にセラミックスは使われており、それだけ有用な素材だ。  中国大陸から焼き物が伝わって以降、日本で独自の進化を遂げた焼き物文化を土台にするかのように、日本ではセラミックスの先端研究が進められ、新たな機能を持った素材が誕生している。  二〇一二年、京都大学工学研究科物質エネルギー化学専攻の陰山洋教授らの研究グループは、セラミックスの内部に水素を溜められることを発見した。  前出したチタン酸バリウムというセラミックスが誕生したのは、七十年以上前のこと。この素材は誘電性を持ち、コンデンサ(キャパシタ)の材料のほか、ヒーターとしても使われている。古くありふれたセラミックス材料に過ぎないこのチタ・・・