「殺人鬼」金正恩に震える北朝鮮
長期安定支配には程遠い「乱行」ぶり
2015年6月号
妻や母、側近たちを「自分の悪口を言った」などの理由で次々に殺害し、「暴君」と恐れられたローマ皇帝ネロ(在位紀元五四~六八年)。今、そのネロすら霞んで見えるほどの暴君が北朝鮮にいる。金正恩第一書記だ。
今年の早春、平壌市内を走っていた乗用車の運転手は突然我が身に降りかかった災難を理解する暇もなかったに違いない。後方に、平壌ではなかなか見かけない最新型のベンツがいることには気づいていた。間違いがあってはいけないと思ったのか、この運転手はスピードを抑え、慎重に走行した。
突然、ベンツの周囲を併走していた別の高級車がスピードを上げ、この運転手の乗った乗用車の前面に出ると、無理やり停止させた。高級車に乗った男たちは、おびえる運転手を外に引きずり出すと、どこかに連行した。その後、平壌市民たちの間に漏れ伝わった話によると、この運転手は即日、処刑されたという。
理由は簡単。ベンツに乗っていた金正恩が、前方を走る乗用車にいらつき、激怒したからだった。
韓国の情報機関、国家情報院は四月から五月にかけ、北朝鮮で繰り広げられている情勢を「恐怖政治」という表現を使って国会や韓国・・・