中国「大介護時代」の壮絶
アジアの福祉人材「総取り」の勢い
2015年6月号
未富先老―。十分な経済発展を遂げる前に、日本を凌ぐスピードで高齢化社会に突入している中国が苦しんでいる。年金や医療費の膨張に加え、介護問題が顕在化してきた。日本も同じく苦境にあるが、十三億人もの人口を抱える中国は問題の規模がケタ違いだ。その深刻さにおののく中国政府は、海外の介護人材「囲い込み」で延命を図る魂胆だ。福祉分野の専門家からは、日本を含む周辺国との人材の奪い合いを懸念する声が広がっている。
「外国人介護要員」が既に登場
上海で衣料品店を自営する三十四歳の男性は、一人っ子政策の第一世代。最近は、一千四百キロ離れた広州市で暮らす六十七歳の父親の介護問題に頭を悩ませている。六十二歳の母親はまだ元気だが、心臓が悪く入退院を繰り返す夫の介護に疲れ切って、息子に「私まで倒れたら誰が介護してくれるの」と泣きついてくる。
男性の家族構成は妻と小学生の息子の三人。妻の両親も北に一千キロ離れた大連市で健在だ。祖父母四人、両親二人、子供一人の典型的な「四二一家庭」である。中国の一人っ子政策は一九七九年に始まったため、現在三十五歳以下の中国の夫婦は基本的に四二一家・・・