「JT株売却」官邸と財務省の暗闘
「完全民営化」を巡る密かな攻防
2015年6月号
財務省が保有する日本たばこ産業(JT)の株式売却による完全民営化をめぐり、首相官邸と財務省が激しい暗闘を繰り広げている。官邸サイドは東日本大震災からの復興予算の補塡と改革アピールを狙い、この「埋蔵金」を掘り出そうと動く。これに対し、JT株の三分の一を所有する財務省は莫大な配当金による「裏予算」や天下り先を死守しようと躍起だ。「官」が支配する日本の象徴とも言えるJT株。この攻防の行方は政治主導を掲げる安倍内閣の真贋を見分ける大きなカギだ。
甘い汁が濃縮された既得権益
安倍晋三首相の日々の動きを伝える新聞は、五月十八日午後二時四十五分から麻生太郎副総理兼財務相、財務省の田中一穂主計局長、中原広理財局長が首相と会った事実だけを伝えている。実は、この会談のテーマこそJT株の売却問題だった。官邸では菅義偉官房長官や他の側近の中でJT株売却による財源の捻出に前向きな声が台頭していた。これを察知した財務省サイドが麻生氏を前面に立てて官邸に乗り込んだのだ。
財務省は財政制度等審議会のたばこ事業等分科会を翌週にも控え、六月中にはJT株売却の是非について・・・