三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

《企業研究》 東芝

社内抗争が生んだ「粉飾会計」の闇

2015年6月号

 日本を代表する企業といってもいい東芝の内部に潜んでいた暗く深い闇が唐突に世間に明らかになった。

 売上高を積み増し、利益をかさ上げする不適切な会計が多年度にわたって行われていたという。今回は電力などインフラ部門で発覚したが、テレビ、半導体など他の主力部門にも及びかねない不気味な状況。暗闇でうごめくのは過去数代の経営上層部の欲と怨念だ。土光敏夫氏はじめ財界で重きをなした経営者を輩出した名門企業は今、地に落ち、泥にまみれようとしている。

「不適切な会計処理が行われている証拠書類を提出したい」。関係者によると、証券取引等監視委員会のホットラインに電話がかかってきたのは、今年の年明け早々だったという。東芝社内か、近い関係者からの通報だった。こうした社内からの告発は監視委員会にとって決して珍しくはないが、東芝ほどの大手企業は事実上初めてだ。監視委員会は慎重に資料の分析と関係者のヒアリングにあたり、東芝側は二〇一五年三月期決算の発表延期という形で、不適切な会計処理の存在を世間に公表した。

 不適切な会計処理の中身はむしろありきたり・・・