「強権独裁化」が進むマレーシア
「イスラム法」強化と言論弾圧の大嵐
2015年5月号
イスラム穏健国家として知られるマレーシアがにわかに強権国に変貌している。国際社会から「テロリストの揺り籠」と批判されることはあっても、国全体としては国民性も含めて平和な国のはずだった。しかし、ここにきて国民生活を揺るがしかねない法改正が相次ぎ、ナジブ政権の強権独裁化が一気に進んでいるのだ。
国教をイスラム教と定めているマレーシアで、人口三千万人に占めるイスラム教徒の割合は六六%でインドネシアの八八%よりも低い。このほか、約二〇%の仏教徒と、約一〇%のキリスト教徒が共存している。当然ながら憲法では信教の自由が認められてきた。
「治安維持法」を導入
三月、北部クランタン州でこの国是を揺るがしかねない事態が起きた。住民の九五%がイスラム教徒である同州議会でイスラム法(シャリーア)を厳格化させるイスラム刑法(フドゥ)の改正法案が全会一致で可決されたのだ。実際の運用には連邦憲法の条項修正が求められるため、「必要な手続きを経て年内施行を目指す」(アハマド・ヤコブ州首相)という。同州与党の全マレーシア・イスラム党(PAS)は憲法修正を求める議員立法案をすでに国会・・・