泥沼シリア「五年目」の実相
「共存」するアサド政権と「イスラム国」
2015年5月号
二〇一一年三月に始まったシリア内戦は五年目に入った。四年間の死者は二十万人を超え、難民は四百万人に近い。戦後最悪の悲劇である。欧米はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の脅威ばかりに目を向け、米国主導の空爆を続けるが、若者たちがISに参加する流れはやまず、暴力の連鎖が中東と世界を脅かしている。
四月半ば、ニューヨークの国連安全保障理事会の非公式会合で、生々しい映像が上映された。
おむつを着けた乳児の胸を看護婦が必死でマッサージする。隣のベッドでは別の乳児が鼻孔から泡を噴き、瞳孔が開いている。他の三、四歳の女児も意識がない。「ちょっと待って」と女医が一人の乳児の胸に聴診器を当て、「もういい。死んでいる」と言う。その処置室で、子供三人と一緒に横たわっていた祖母の計四人が死んだ。
映像は今年三月十六日、シリア中部のイドリブ県サラミンの仮設病院で撮影されたものだ。その夜、二度にわたって、アサド政権軍が樽爆弾を投下した後、二百人の住民らが、呼吸困難や吐き気を訴えて治療を受け、うち十九人が死んだ。症状などから爆弾に塩素ガスが充鹸されていた可能性が強いという。
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