中東「在留邦人」の安全は大丈夫か
テロと誘拐の脅威に「打つ手なし」
2015年5月号
三月十八日に発生し日本人を含む二十人以上の外国人観光客の命を奪ったチュニジアの博物館襲撃事件。このテロの直接の黒幕とされる過激主義勢力「ウクバ・イブン・ナーフィウ旅団」は、事件の約一カ月前、政府治安部隊が仕掛けた厳しい掃討作戦に防戦を余儀なくされていた。事件の起きた首都チュニスから南に約三百キロ離れた山岳地帯を拠点とするこのテロ集団が警察施設などを相次いで襲撃したため、治安部隊が大規模な攻撃に出ていたのだ。
このようにテロ組織が窮地に立たされたとき、今次の観光客虐殺のような反響の大きいテロを計画実行することが経験上知られている。「殉教志願者」を使った「特攻」はそれを敢行する要員を育て、また消耗するわけであるから、いつも実行できるわけではない。だから、掃討作戦から一カ月を経た当時はより警戒態勢を強めるべきであったのだ。テロリストが、単に山岳地帯だけではなく、より作戦行動が容易かつ影響力の大きくなる首都を付け狙うであろうと。
日常生活の一部と化したテロ
本稿が読者の目に触れる約一カ月前、似たような対テロ掃討作戦がエジプトのシナイ半島北部で実施された。こ・・・