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政治

安倍流「政治主導」に顕著な弊害

全中・萬歳「首斬り劇」の真相

2015年5月号

 政治主導という「呪文」を聞かなくなって久しい。国家公務員制度改革に血道をあげた安倍晋三率いる自民党が三連続で国政選挙に圧勝したことで、霞が関は虎の尾を踏むまいと内閣総理大臣の安倍の顔色を窺い、同党内にも逆らう者はなく、総理大臣官邸主導の政治が常態となったため、殊更に言い募る必要がなくなったのだ。  問題は、それが、抵抗勢力を切り捨て、失政の責任は官僚に押しつけることが当然と考える、小泉純一郎元総理大臣のポピュリズムと民主党政権の悪弊を合体させたかのような危うい政治主導に傾斜している点だ。それが如実に表れたのが、全国農業協同組合中央会(JA全中)改革と萬歳章会長の突然の辞任表明、そして、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る混乱である。 私憤による見かけばかりの改革  農協改革は当初、環太平洋経済連携協定(TPP)による農産物自由化をにらみ、地域農協の創意工夫で国際競争力を高めるとの大義名分で、その自由な経営を縛ってきたJA全中を解体するとした急進的な案で始まった。自民党の有力支持団体であるJA全中は「農家の所得向上や地域活性化につながらない・・・