「LNGの覇者」シェルの野望
英ガス企業「買収」は日本に悪影響
2015年5月号
英蘭系メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルが天然ガスの開発・生産を主体とする英BGグループを買収した。総額四百七十億ポンド(約八兆四千億円)という巨大M&Aで、一九九九年にエクソンがモービルを吞み込んだ米石油大手二社による〝メガマージャー”に次ぐ規模となる。
だが、エネルギー業界にはこれで新たな業界再編に向かうといった熱気はなく、むしろ冷めた空気が漂っている。エネルギーの将来と新興国経済の今後が見通せなくなっているからだ。
BGといっても日本ではエネルギー業界関係者くらいにしか知られていない。元々は英国の公営都市ガス会社で、一般家庭や企業に導管を通してガスを販売していた。公営ではないが、東京ガス、大阪ガスのような会社だった。それが民営化され、さらに九七年に国内でガスを小売りする部門、いわゆる下流事業と天然ガスを調達する部門、上流事業の二社に分割された。
下流部門はセントリカの社名に変わり、その後、買収などで電力事業も兼営するようになった。上流部門は海外のガス田などの開発、液化天然ガス(LNG)事業などを急拡大させ、海外でのガス小売り事業も手がける今・・・