M&Aで「喰い物」にされる日本企業
空前の買収ラッシュで「高値拙み」連発
2015年5月号
「グローバル企業への第一歩がようやくはじまった。日本に閉じこもって物流企業が成り立つ時代は終わりだ」
記者会見で西室泰三社長はこう気炎を上げた。
今年一~三月期で最大のM&Aディールとなった日本郵政グループによる豪州物流大手、トールホールディングス(HD)の買収劇。傘下の日本郵便を通じ、六十四・八六億豪ドル、日本円にして約六千二百億円を投じてトールHDの発行済み全株式を取得する。同社の五月株主総会での承認などを経たうえで、早ければ六月上旬にも買収手続きを完了させる方針だ。
M&A市場が凄いことになっている。日本企業が関連した今年一~三月期のM&Aの成約総額は公表ベースで五・七兆円。前年同期に比べておよそ六五%増え、一~三月としては過去最高を記録した。なかでも急増しているのが、郵政―トールHDのような、日本企業による海外企業のM&A。成約総額全体の実に八割近くにのぼる四・三兆円超に達し、前年の水準からほぼ倍増。大型案件のトップテンをみても、うち八件がこうした買収劇だ。
「円安で相対的に割高感が強まっているにもかかわらず、海外企業買いの勢いは四月以降もきわめて・・・