中国が挑む「新グレートゲーム」〈前篇〉
インドとの南アジア「覇権攻防」
2015年5月号
十九世紀に英国、ロシアの勢力圏争いとして始まったユーラシア大陸の「グレートゲーム」。その後、米欧列強、日本までプレーヤーとなったゲームで、中国は常に踏みにじられる立場に過ぎなかった。その中国が今、「一帯一路」のシルクロード戦略を掲げ、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を武器にゲームに加わった。二十一世紀前半のグローバル覇権を間違いなく左右する「ユーラシア・グレートゲーム」はどんな展開をみせるのか、二回にわたって探る。
〝二十一世紀の南満州鉄道〟建設
四月二十日、中国の習近平国家主席は黄土色の砂塵が舞うイスラマバード近郊の空軍基地に降り立った。中国首脳としては九年ぶりのパキスタン訪問となったが、出迎えは華やかさより緊張が目立った。訪問はもともと昨年九月に予定されていたが、パキスタンの治安悪化で延期されていた。今も現地情勢が改善されていない中で訪問を強行したのは、中国が三月末のAIIB参加国の締め切りを機に、グレートゲームを本格始動したかったからだ。
習主席が会談でシャリフ首相にもちかけたのは「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」の構想だ。中・・・