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連載

誤審のスポーツ史 04

未払いで消えた超大穴馬券
中村 計

2015年4月号

 日本競馬史上、おそらくは最後の大誤審と言ってもいいかもしれない。

 競馬に誤審は存在しない―。そう考えられていた。神の目、つまり写真判定が早くから導入されていたからだ。誤審が大損失につながる競馬界の写真判定の歴史は長い。一九三四年、米カリフォルニア州のサンタアニタパーク競馬場で導入されたのが最初だと伝えられている。日本では四八年に山口シネマが開発した高速度カメラによる写真判定が採用された。ちなみにオリンピックで初めて写真判定器が使われたのも同年開催のロンドン五輪からだ。

 競馬の順位は通常、決勝審判委員と呼ばれる三人の目視によって決まる。ゴール前のひな壇に縦一列に並び、経験が豊富な順に上から座る。彼らは事前にジョッキーの服の模様や帽子の色、また馬のゼッケン番号を覚えておき、一着から最下位まで一気にメモを取る。それを互いに照合するのだ。数頭ならたやすいが、現在の競馬は最大で十八頭が出走し、十頭近い馬が団子状態でゴールすることもある。馬の時速は六十から七十キロ。そのため決勝審判委員の視力は裸眼で二・〇以上が必須条件だ。それでも雨の日などは暗く煙・・・