「火達磨」のブラジル経済
大衆迎合政治の重すぎる「代償」
2015年4月号
歴史的な干ばつと世界的な経済危機の影響―。ブラジルのルセフ大統領は三月八日、日曜日のテレビ演説で国民に向かって自国経済の危機の理由をあげ、今さらながら財政再建を訴えてみせた。大統領選の決選投票を僅差でかわし、発足した第二次ルセフ政権。だが、いつもの詭弁は通じない。周知の通り、この一週間後に民主化後最大となる百万人を超す大規模デモが発生、ルセフ退陣、弾劾裁判を要求する事態となっている。
ブラジル国民の怒りの真の矛先は、汚職ではなく経済である。今年は景気後退が予想され、四半世紀に一度クラスの不況となる公算が大きい。楽観的見通しが常のブラジル中央銀行のレポートでさえ景気後退を予想し、その内容は発表のたびに下方修正されている。緊縮財政によって来年まで景気後退が続く可能性も高いが、もし二年連続で景気後退が起これば一九二九年の世界大恐慌以来である。ポピュリズムにまみれ、世界上位のステージに上がるために必要な競争力向上のための投資を怠った報いが、まさに今はじまったのである。
「官製リーマンショック」の状況
二〇一一年の第一次政権就任時には九〇%を超えていたル・・・