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経済

アサヒビール「甘口経営」の陥穽

国内外で頭打ちの「業界三位」

2015年4月号

「昨年の総括として、消費税増税、最盛期の天候不順等、厳しい事業環境のなかで、全事業で増収増益を果たし、当期純利益は十四期連続で最高益を更新することができました」  アサヒグループホールディングス(HD)の泉谷直木社長は二月、二〇一四年度決算説明会でこう胸を張った。ライバルのキリンHDが国内外で苦戦するなかで「アサヒがキリンを超えた」といった言葉が乱れ飛んでいる。  だがアサヒは躍進しているのだろうか。「ビール、酒類、飲料、食品」「国内販売、世界販売」「数量、金額」など比較する軸は多数ある。そもそも国内ビールシェアで初めてキリンを超えたのは一九九八年。それ以降シェアは横ばいだ。  では単純に「ビールや酒類を主体とする日本の食品大手三社」を一四年度売上高で比較しよう。アサヒグループHD(一兆七千八百五十四億円)は、キリンHD(二兆一千九百五十七億円)とサントリーHD(二兆四千五百五十二億円)のいずれにも劣っている。勘違いしてはいけない。アサヒは紛れもない「業界三位」である。  それだけではない。〇五年度の売上高はアサヒが一兆四千三百億円、キリンは一兆六千三百二十二億・・・