アジアの「中所得国」に落ちた日本
気づけば韓国以下の賃金水準に
2015年4月号
二月下旬、東京や札幌などの繁華街、箱根、別府などの温泉地は今年も春節(旧正月)休暇を過ごす中国人やタイ、マレーシアなどからの観光客で賑わった。もはや当たり前の光景だが、外国人客増加と喜んでばかりはいられない。背景にあるのは日本の物価や賃金の相対的な下落だからだ。「管理職層でみれば、日本の所得水準はアジアの中間レベル」(人事コンサルタント)。過去二十年、政府も企業も賃金を上げる努力をしなかった結果であり、円安が今、それを際立たせている。
最近、日経新聞が実施したアジアの二十歳代の若者調査が興味深いデータを明らかにした。日本、韓国、中国、インド、タイなどアジア十カ国の二十歳代の若者の月収をみると、トップはシンガポールで三十六万円、二位が韓国で二十五万円、三位は日本の二十二万円、四位が中国の十六万円。日本はシンガポールの六割にとどまり、韓国よりも少なく、中国に追いつかれつつある。日本人一般が持つ印象とはまったく異なる状況が垣間見えた。
日本生産の方が安上がり
国の所得水準を映す鏡としては、一人当たり国内総生産(GDP)がよく使われる。これでみれば、五万五・・・