アジアインフラ投資銀行の「虚実」
中国による中国のための「覇権の道具」
2015年4月号
中国が提唱、主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が大きなうねりとなって世界に波紋を広げている。当初、中国の呼びかけに応えた参加国はアジアの途上国中心だったが、英国やドイツなど欧州勢が相次ぎ参加を表明したからだ。日米は取り残され、中国の思惑通りの展開。問題は、AIIBが膨大なインフラ需要に応えるアジアの救世主になるのか、中国によるアジア覇権の道具と化すのかだ。カギを握るのは日本だ。
三月十二日は日米両国政府にとって衝撃的な日となった。英国が前触れなく、AIIBへの参加を中国に申し入れたからだ。そこから堰を切ったようにドイツ、フランス、イタリアが参加申請を発表、欧州の主要先進国はすべて中国になびいてしまった。
「『欧州情勢は奇々怪々』とでも言いたくなる」。ある財務省関係者はこう漏らした。一九三九年、同盟国であったナチスドイツが突如、日本の仮想敵だったソ連と不可侵条約を結んだことに驚愕した、時の平沼騏一郎首相の言葉になぞらえたものだ。日本にとってはそれほどのインパクトがあった。日米と英国、ドイツなど主要先進国で中国のアジア経済覇権を阻止しようとタッグを組んでいたはずだっ・・・