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連載

皇室の風79

胡蝶蘭の思い出
岩井 克己

2015年3月号

「世界らん展」が二月十四日から二十二日まで東京ドームで開かれた。平成三年の第一回から毎年会場を訪れている高円宮久子妃のインタビュー記事(二月十三日付読売新聞)を読んだ。

 久子妃本人が以前から愛好し、夫の高円宮憲仁親王も頻りにカメラを向けていた思い出の花で、宮邸のサンルームには三百鉢もの蘭があふれていた。平成十四年の宮の急逝後、ほとんど園芸家に引き取ってもらったという。

 久子妃と蘭の花にまつわる遠い思い出がふっと蘇ってきた。



「おめでたと伺いました。この蘭はお祝いのつもりです」

 昭和六十三年一月、宮邸応接室のソファで対面した久子妃に、こう切り出した。第二子懐妊の内密情報を得ていた。高円宮夫妻の結婚から三年余、赤坂御用地に宮邸が新築されて一年後のことだ。

 宮邸完工時に夫妻は私室部分も含め内部を全面的に報道陣に公開してくれた。後にも先にも例はないはずだ。昭和六十二年暮れには同僚と共に誘った会食にも気軽に応じ、皇族としての考えを率直に語ってくれた。謝意・・・