三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

誤審のスポーツ史 03

銀メダルならいらない
中村 計

2015年3月号

 銀メダリストの振る舞いは、じつにドラマチックだ。

 二〇一〇年のバンクーバー冬季五輪。力を出し切れず二位に終わった女子フィギュアスケートの浅田真央は会見でしゃくり上げた。その態度は、準優勝の立場を何よりも雄弁に物語っていた。

「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれるサッカーでは、学生からトッププロまで、表彰式で銀メダルを首から外すシーンを頻繁に見かける。元日本代表の大迫勇也(ドイツ・ケルン所属)も、鹿児島城西高校時代、〇九年の全国高等学校サッカー選手権大会の決勝で涙を呑み、「優勝しか考えていなかった」とすぐに銀メダルを外し手に持った。誉められた行為ではないが、心を打たれるシーンでもあった。

 が、昨年十二月七日、全日本アイスホッケー選手権大会の決勝で敗者が見せた行為は、さすがに一線を越えていた。いくら微妙な判定だったとしても、だ。東北フリーブレイズは、延長戦の残り二秒で栃木日光アイスバックスに決勝ゴールを奪われ、2―3で栄冠を逃した。そのゴールはパックがゴールポストに当たって跳ね返ったようにも見えたため、得点が認められるま・・・