エジプト苦境の「リビア介入」
ムスリム同胞団との「死闘」開始
2015年3月号
映画の一シーンのように二十一人のエジプト人キリスト教徒は殉教し、地中海は鮮血に染まった……。ハリウッド顔負けのスペクタクルに仕上げられたこの処刑映像は、似たような手法で制作されたヨルダン軍パイロット焼殺の動画と同じ役割を果たした。ヨルダン空軍機が出撃し、シリアの過激派組織「イスラム国(IS)」の拠点を叩いたように、エジプト空軍機によるリビア・デルナへの爆撃作戦の直接、かつ唯一の口実となったのだ。
地中海に臨む美しい街デルナは、ISが目論む世界制覇の重要拠点たる属領「マグレブ州」を建設する足掛かりとして、同組織の戦闘員によって支配されている。こう主張するエジプト政府は、無辜の自国民がこのような形で虐殺された以上、爆撃で報復するのは主権国家に与えられた自衛権の正当な行使だ、と強弁した。
ISと同胞団も「相互乗り入れ」
実際、リビアでは選挙で選ばれた政府がムスリム同胞団系の過激派武装集団に首都から追放され、東部のトブルクに避難している。ミスラタ勢力とも呼ばれるイスラム過激主義武装勢力は、その名を変えているものの、エジプトに源流を有するムスリム同胞団と同根・・・