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WORLD

米国「食糧覇権」の強欲

「種子ビジネス」で世界の農場を支配

2015年3月号

 今年一月末の北京。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、「遺伝子組み換え(GM)作物の世界の作付面積が過去最高を更新した」と発表した。具体的な発表内容やISAAAの実態は後述するとして、なぜ発表場所が北京なのか。  その謎を解くためには、三年前の食糧安全保障に関する米中の対話にさかのぼる必要がある。中国のトップリーダーへの昇格が内定していた習近平副主席(当時)は、二〇一二年二月に訪米し、首都ワシントンでオバマ大統領と会談した後、ヴィルサック農務長官とともに穀倉地帯アイオワ州で開かれた「米中農業シンポジウム」に出席した。  ここで習副主席は「民は食を以て天となすという。農業を発展させ、農家を豊かにすることが最重要だ。中国には主食用穀物と食用油は十分にあり、食糧安保に対する懸念はないが、それでも米国産の大豆や飼料が必要だ」と述べた。  つまり、主食となる小麦やコメの自給は堅持するが、経済成長に伴う肉や酪農製品への需要に対応するため、大豆など家畜向け飼料を米国から調達すると「公約」したのだ。実際に、中国は米国産の大豆を大量輸入し、習が国家主席に就任した後の一三年、中国政・・・