トヨタ章男が強化する「系列支配」
デンソー「十四人抜き」社長人事の深層
2015年3月号
トヨタ自動車系列では筆頭会社となるデンソーで、衝撃的なトップ人事が発表された。加藤宣明社長が代表権のある会長に就任し、末席専務役員の有馬浩二氏が副社長以下十四人抜きで社長に就任する。過去二番目の若さでの大抜擢で、取締役を経験せずに社長に就任するのは同社で初めて。グローバル競争で迅速な意思決定が求められる自動車部品業界にあって経営の若返りは歓迎すべきだが、デンソーの自主的な判断ではなく、親会社のトヨタから押し付けられた人事というから穏やかではない。他のトヨタ系主要サプライヤー(部品メーカー)でもトップの世代交代が相次いでおり、その背景には豊田章男トヨタ社長の強い意向が働いているというのだ。
二月三日、名古屋市内で記者会見に臨んだ有馬次期社長は「一月に加藤社長から社長就任の打診を受けた際には、まったくの想定外で絶句した」と振り返った。後継指名をした加藤社長は「技術開発のスピードが一段と速くなっており、トップは知見だけでなく、気力や体力の若さが必要」と若返りの理由を説明した。「有馬氏が驚いたのは実話だろうが、加藤社長の背景説明はあくまで建前にすぎない」と、トヨタグループの内情に詳し・・・