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社会・文化

認知症で「安楽死」を認めるべきか

欧米で議論沸騰の「死の権利」問題

2015年2月号

 社会の高齢化が進む米国では、日本と同様に認知症患者が増加している。認知症は、遅かれ早かれ自主的な意思決定を行う能力を失う病だ。誰にとっても、認知症の宣告は恐怖だ。自分の人生をコントロールできなくなる病気に、今のところ根本的な治療法はない。砂時計の砂が落ちていくように、自分が自分である時間が失われていく中で、米国人は残りの人生をどのように生きたいか、そしてどのように死にたいか、葛藤する。  早期診断後の最も辛い選択肢は、自殺である。  初期の認知症患者は感情的であり、金銭面や介護での家族への負担、将来の身体的および精神的な衰退への計り知れない不安にさいなまれる。患者を愛する家族も苦しむ。ただし、これまでの報告では、末期における認知症患者と自殺の間に関連は認められていない。計画を実行する能力と洞察力の機能が低下した末期認知症患者は、自殺の意思決定はできない。  米国ミシガン大学精神科リサ・セイフライド医師らは、二〇〇一年から〇五年の退役軍人省のデータを用いて、認知症患者における自殺の大規模疫学調査を行った。その結果、六十歳以上の約二十九万人の認知症患者のうち、二百四十一・・・