「習近平vs情報機関」暗闘の深層
「反腐敗」は危険水域に突入
2015年2月号
中国の国家安全部は通称「国安」と呼ばれる。共産党独裁を舞台裏で支える情報機関、秘密警察だ。その国安の現職副部長が二人、相次いで共産党中央紀律検査委員会に連行されたという情報が流れている。習近平政権が、権力の維持装置である国安と対決状態に入ったのだから異常事態だ。なにが始まるのか。
逮捕されたといわれる一人の馬建副部長は、海外に駐在する中国人外交官や商社員などを監視する第十局出身。党高官が海外に隠している資産情報をにぎる部門だ。もう一人は邱進副部長。中国国内で、中国要人に接触する外国情報機関を監視する第八局出身。二人とも党首脳の個人情報を握る立場にある。
習近平総書記は二〇一二年の党大会で権力の座についてから、反腐敗運動で反対派をパージする一方、党中央政治局に権力を集約してきた。だが、特権を奪われた既得権益集団の抵抗は続いている。公然と対抗したのが軍部だった。習近平は「東北軍閥」の首領、徐才厚(前党中央軍事委副主席)を昨年秋の党中央委員会総会、通称「四中全会」で党籍剥奪、起訴処分了承に持ち込んだ。
その後、徐才厚派の幹部将校を一斉に更迭し、二十人近くを軍の紀律検・・・