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中国でも過熱する 「外国人排斥」

「スパイ容疑」で狙われる駐在者たち

2015年2月号

 中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁は一月中旬、連名で全国の大学に「大学生への思想教育の強化」に関する通達を出し「マルクス主義の価値観を確立させ、敵対勢力の浸透を断固して阻止せよ」と強調した。昨年春、中国とのサービス貿易協定の締結に反対する台湾の大学生らが台北の立法院を占拠した「ヒマワリ運動」に続き、秋には香港の大学生らが行政長官の直接選挙を求めて大規模な抗議デモ「雨傘革命」を展開したことが通達の背景とされる。  中国当局は国内の大学生が台湾や香港の若者をまねて、政府への不満をデモなどで抗議する事態を防ぐ狙いから、教育現場での思想統制を強化し始めた証文だ。  通達で使われた「敵対勢力」の言葉は、大学の教育現場に大きな衝撃を与えた。北京師範大学のある教授は「外国人と接触したり、授業で政府に厳しい意見を言えば、敵対勢力の一味にされかねない。とても恐ろしい」と漏らす。  敵対勢力は一般的に「政権転覆を企てる国外の組織」の意味で、毛沢東時代に多用された。毛沢東は国内で起きたさまざまな論争や意見の対立を、「人民内部の矛盾」と、「敵と味方の矛盾」(敵我矛盾)に分類。人民内部の矛盾・・・