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欧州経済は「多重危機」に突入

製造業・金融・政治の「同時倒壊」へ

2015年1月号

 ユーロ圏の危機が年明け早々から大きな懸念材料だ。  またしても、ギリシャの政治危機が端緒だが、底流にはヨーロッパ経済の構造的な弱点がある。欧州経済の状況は、製造業が崩壊し、金融機関の脆弱さが増し、マクロ経済政策で各国の対立が先鋭化するなど、危機が多重的かつ複合的になっている。原油価格の急落やロシアの通貨ルーブルの急落も、欧州経済にはマイナスに働くと見られており、ユーロ圏のデフレーション懸念は高まるばかりだ。日本の「失われた二十年」をそのままなぞっているとの指摘が、各国の首都でいよいよ現実味を帯びて語られている。 銀行のすさまじい貸し渋り  ギリシャ国会の動きに欧州の目が集まっていた昨年十二月中旬。イタリア・ミラノのオフィス街にある、国際的な法律事務所の一室で、中国の光明食品(ブライト・フード)とイタリアの食品大手「サロフ」の役員たちが、買収契約に署名していた。サロフは「ベリオのオリーブオイル」で日本でも知られた、イタリア食材の老舗。中国側は株式の九〇%を取得し、創業家は同一〇%を保持、ベリオなど各種ブランドを残す。欧州名門企業を買い漁る中国・・・