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政治

《政界スキャン》358

「ポスト安倍」が動き出した

2014年12月号

 財務官僚たちにとって衆院解散の十一月二十一日は「屈辱の日」「敗戦の日」として省史に刻まれることになろう。首相安倍晋三の消費再増税延期を食い止めることができなかったからである。

 彼らには二つの誤算があった。一つは、第一次安倍政権の秘書官で現主計局長である田中一穂の安倍に対する影響力を過大評価し過ぎたこと。田中はぎりぎりまで安倍が再増税に踏み切ると予測、組織としての対応を鈍らせた。

 もう一つは、この役所が最も得意とする政局見立ての失敗であった。つまり、すでに法制化されている一〇%再増税を延期するには法改正が必要だが、再増税派が主流を占める自民党内でそのことは党内政局に直結する。安倍にはとてもそこまでのエネルギーをこの問題に投入する気はないだろう、という甘い見通しだった。

 それがゆえに反撃も後れをとった。延期・解散の流れが強くなってきた段階で、シンパの有力政治家の尻を叩いて政権への圧力を強めたが、時すでに遅し。元首相森喜朗からは「何で俺の所に来るんだ。麻生太郎(副総理)に言うべきじゃないか」と突き放された。
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