Book Reviewing Globe 367
南シナ海の歴史を曲げる中国
2014年12月号
The South China Sea
The Struggle for Power in Asia
Bill Hayton
Yale University Press
2014
南シナ海は、古代から諸文明と諸民族が入り交じり、多彩な海上交流史を織りなしてきた。東南アジア、インド、ペルシャ、アラビア、アフリカ……。スペインが台頭した大航海時代以後は、メキシコの銀と中国の絹と西欧の工業製品の三角貿易が生まれ、インド洋と南シナ海と太平洋がつながった。この海洋は単なる地域の海ではない。それは世界の海であった。
そして、今世紀再び、南シナ海で起こることが世界政治の行方を大きく左右することになるだろう。中国の台頭が超大国間の紛争をもたらすのか。中国の指導層は国際ゲームのルールに則って行動するつもりなのか。米国は現状を維持する意思を持ち続けるのか―著者は、英BBCのジャーナリスト。そうした歴史を丹念に紐解いたこの本の題名は「南シナ海の世界史」とするべきであった。
中国は南シナ海に対して「歴史的権利」を主張している。一九七五年、鄧小平はベトナムのレ・ドアンと会・・・