不運の名選手たち 60
須田貴浩(ボート選手)二つの「ありえない」を乗り越えて
中村 計
2014年12月号
感情を読み取られないよう、意識的に表情をコントロールしているように映った。
「ありえないですよ、本来は」
そう静かに語るのは、ボート競技の男子軽量級ダブルスカルの日本代表・須田貴浩だ。
ボート競技は、スウィープ種目とスカル種目に大別される。前者はオール一本、後者はオール二本だ。つまり、(男子)軽量級ダブルスカルとは、平均体重七十キロ以下かつ個人の体重が七十二・五キロ以下(重量級は体重制限なし)の二人組がオールを二本ずつ持ち、ボートを漕ぐ種目だ。
「ありえない」ことが起きたのは、二〇一二年二月二十七日だった。
前年十一月、ロンドン五輪アジア大陸予選につながる国内代表選考会が開催され、三十歳の須田と二十二歳の西村光生の二人が代表に選ばれた。アジアのレベルを考えると実質、五輪の代表権をつかんだも同然で、確定すればともに初の夢舞台となるはずだった。
「競技生活を続けてこられたのは、オリンピックに出るという大きな目標があったから」
とこ・・・
「ありえないですよ、本来は」
そう静かに語るのは、ボート競技の男子軽量級ダブルスカルの日本代表・須田貴浩だ。
ボート競技は、スウィープ種目とスカル種目に大別される。前者はオール一本、後者はオール二本だ。つまり、(男子)軽量級ダブルスカルとは、平均体重七十キロ以下かつ個人の体重が七十二・五キロ以下(重量級は体重制限なし)の二人組がオールを二本ずつ持ち、ボートを漕ぐ種目だ。
「ありえない」ことが起きたのは、二〇一二年二月二十七日だった。
前年十一月、ロンドン五輪アジア大陸予選につながる国内代表選考会が開催され、三十歳の須田と二十二歳の西村光生の二人が代表に選ばれた。アジアのレベルを考えると実質、五輪の代表権をつかんだも同然で、確定すればともに初の夢舞台となるはずだった。
「競技生活を続けてこられたのは、オリンピックに出るという大きな目標があったから」
とこ・・・