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社会・文化

京大「熊野寮」という異様な空間

「中核派」育む学生寮の現在形

2014年12月号

「熊野寮は京大の中にある異様な場所。中でもB棟の地下は特殊空間だから」  京都大学の大学院生は語る。  十一月十三日午後、警視庁公安部が京都市左京区にある京大の学生寮「熊野寮」の家宅捜索を行った。捜査員に加えて機動隊も投入され、寮生と押し問答になる姿が全国ニュースで流れた。いまだに新左翼の残党が残る熊野寮の異質さが浮き彫りにされたが、数少なくなった「自治寮」でどのように中核派は生き残っているのか。 活動始めた「偽自治団体」  京大のキャンパスは、京都市左京区、東大路通と今出川通が交わる百万遍付近に密集している。北から、理学部、農学部のある北部構内があり、そこから時計台で有名な本部や旧教養部の吉田南などが並ぶ。最南端の薬学部と医学部附属病院のさらに南、丸太町通に面する場所に熊野寮はある。  鉄筋四階建てのA棟、B棟、C棟と食堂が並び、定員は四百二十二人。通常、春と秋に募集を行っており、ほぼ定員に近い寮生がここに住んでいる。ただし、寮生といってもいわゆる京大生とは限らない。大学院生はもちろん聴講生であっても入寮できるからだ。入寮後に資格を失ったと・・・