先月の本コラムにも書いたとおり、低栄養は感染症と結びついていて、平均寿命を低くする。考えてみると百年前までは人類のすべてが低栄養であった。人類の遺伝子は、四万年あまり前から変わっていないとされている。いつの時代にも、百歳を超えた人は、数は少ないが存在した。天上（エデンの園）に住むヒトの寿命は何百歳にもなっているが、地上のヒトの寿命はそれよりかなり短い。創世記六章では、神はヒトの寿命を百二十歳とすることにしたとされている。モーゼも百二十歳まで生きたと記されている。

　遺伝的には百歳まで生きる人類も、諸々の民族の平均寿命でみると、百年前までは五十歳に満たなかった。十九世紀の終わりから二十世紀のはじめに、平均寿命五十歳の壁を突破する民族や国民が出現したわけである。それまでは、人類全体の栄養状態が悪く、感染症を克服できなかった。本コラムでも述べたように、肉を豊かに食べるようになった国々の順に平均寿命五十歳の壁を突破した。肉の摂取の多い国から順に感染症が減少したからである。オーストラリアの三十七分の一しか肉を食べていなかった日本人の平均寿命は、三十歳代後半に低迷していた。・・・