「迷走」深まる金正恩体制
核実験「強行」に傾き始めた
2014年11月号
九月から十月にかけ、期待と失望とに揺れ動いた人物がいた。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬議長だ。日本政府の制裁一部緩和に伴い、九月上旬に約八年ぶりに訪朝。十月七日に帰国するまで約一カ月間、北朝鮮に滞在した。
彼の最大の目的は金正恩第一書記との面会だった。北朝鮮関係筋は語る。「議長は訪朝前、必ず正恩氏と面会できるという確約を得ていたようだ。面会すれば、これ以上ないお墨付きを得たことになると、訪朝団は意気込んでいた」。
ところが、待てど暮らせど、正恩氏は現れなかった。九月二十五日に平壌で開かれた最高人民会議の席上で会えるのではないか、という淡い期待もかなわなかった。十月三日には長く朝鮮総連の後ろ盾となってきた姜周一元朝鮮労働党対外連絡部長が死去するという暗いニュースも飛び込んできた。結局、許議長らは正恩氏と面会を果たせずに帰途に就いた。
許議長らは今、「正恩氏の親筆を頂いた」と触れ回り、権力維持に懸命だが、それを眺める前出北朝鮮関係筋はこう言う。「手紙を与えたということは、会わないという意思表示だ」。正恩氏は許議長の帰国後、一週間経つと、何事もなかったよう・・・