中国で高まる「反習近平」気運
経済失速と改革強行に翻る「反旗」
2014年11月号
公費の無駄遣い禁止から汚職腐敗の摘発、国有企業や人民解放軍の既得権打破まで容赦ない改革を進める習近平政権の足元が揺らぎ始めた。過去二十年にわたる高成長の恩恵を最も受けてきた大手国有企業と中流層が反旗を翻し、汚職摘発に喝采していた農民・労働者も景気の急激な悪化で離反し始めたからだ。苦い薬を国民に飲ませることで中国の長期的な安定成長を目指した習改革は漂流し、中国経済はハードランディングのリスクが高まってきた。
「まるで文化大革命の再来だ」。北京の政府機関に勤める高級官僚の一人がこう説明してくれた。今春、職場に一通の通達が届いた。同僚や他部門で汚職を見つけたらすみやかに報告するよう求める内容で、規律検査部門へのホットラインの電話番号も各人に渡された。しかも率先して密告した本人は、企業の談合事件と同様に自らの汚職は情状酌量される、と耳打ちされた。
一九六六年から十年間続いた文化大革命は毛沢東主席の政策に疑問を呈する人々を資本主義に走る「走資派」や「右派」と呼び、次々に処分していった。その時使われた手法が同僚、親戚、兄弟までをも陥れる密告だった。文革中の悪夢が再び中国の政府機関、・・・