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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》原子力損害賠償機構

肥大化する経産省の新「伏魔殿」

2014年11月号

 あの3・11から三年半余り、東京電力と中部電力が火力発電事業の包括提携に合意した。首都圏と中京圏をまたぎ、燃料の共同調達、火力電源のリプレースなどを推進する新会社を、今年度中に折半出資で設立する。それは、戦後の電力九社による「護送船団」体制の終焉を意味する。

 しかし、十月七日に揃って記者会見した東電の廣瀬直己社長、中電の水野明久社長の表情は晴れなかった。その場にはいない〝影の演出家〟が存在するからだ。

 実はこの提携、エネルギー業界では「官製アライアンス」と呼ばれ、仕掛けたのは東電の五〇%超の議決権を握る原子力損害賠償支援機構―。経済産業省が実質運営するこの認可法人は、福島第一原子力発電所の事故を受け、名称通り被害者の損害賠償を円滑に行うために設置された。だが実態はほとんど知られていない。

 賠償円滑化を名目とした東電改革は、いつの間にか、エネルギー産業再編の舞台装置となり、そのシナリオが包括提携なのだ。演じる廣瀬・水野両社長が愉快であるはずはなく、二人して訴えた「民間企業同士の自律的提携」は虚しく響く。今や経産省の・・・