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政治

落日の「松下政経塾」

二万平米の敷地に塾生「十二人」

2014年10月号

「政治家は何しとるんかな……」  松下電器産業(現パナソニック)の創業者、松下幸之助はこうつぶやいたという。松下は自ら次世代の指導者を育てるべく一九七九年、八十四歳のときに「松下政経塾」を設立した。しかし今、政経塾は幸之助翁が想像した姿とは程遠い「政治家予備校」に堕している。 「熱い志をもった塾生が集まっていたのは事実。しかしそれはいつまでも『青臭い』ままだった」  四十代の塾生OBの一人は自戒を込めてこう振り返る。民主党政権時代に「わが世の春」を謳歌した政経塾はどこへ向かうのか。 小粒になる「講師陣」  湘南海岸を横目に走る国道一三四号線から内陸に入る県道三〇号線沿い、潮の香りも消えぬ場所に松下政経塾はある。石造りの門を抜けると二万平米の敷地には、重厚な建物が立ち並んでいる。入塾の時点で二十二歳から三十五歳の「志をもった若者たち」がここで学ぶ。  しかしこの「キャンパス」に過去の活気はない。設立当初、毎年三十人もの塾生を採用して、最盛期には百五十人もの若者が集った学舎に現在いる塾生はわずか十二人だけになった。 「かつては野望をも・・・