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中国社会を蝕む「医療閥」の悪辣

医薬品許認可で利権を牛耳る集団

2014年10月号

 十三億人の中国人の不満は、経済格差や役人汚職、食品安全など多岐にわたる。実は、中でも最も大きなウエートを占めているのは医療への不満だ。高齢化が進む中国では医療費が増大し続け、二〇一五年にも日本を抜いて米国に次ぐ医療市場となる。その巨大利権を牛耳っているのは、毛沢東時代から連綿と続く「医療閥」であり、彼らがドル箱の医薬品許認可を差配している。習近平国家主席は、医療改革を掲げているが利権にまみれたその壁は途方もなく分厚い。 桁違いの賄賂  北京の裕福な家庭で家政婦として働く四川省出身の林小芳さんは、ある日足の裏に鈍痛を感じるようになった。痛みは日に日に広がり体を侵食したが、四川省の農村で入っている健康保険は北京では使えないため耐えるしかなかった。  見かねた雇い主が厚意で医療費を出してくれることになり、林さんはようやく医師の元に行った。しかし新聞に広告を出している総合病院で受診した若い医師は数分程度の聴き取りの後に痛み止めを出しただけだった。診察料は九百五十元(約一万六千円)。三週間後に再受診すると血液検査が行われて「リウマチ」という病名がついた。費用は二・・・