「電力自由化ビジネス」東芝の蹉跌
システム受注争いで日立に「惨敗」
2014年10月号
その入札価格、十六億円が明らかになったとき、電力関係者は一様に驚きの声を上げた。
「日立が落札? 東芝ではないのか……」
八月二十八日に行われた「広域機関システム」の開札―。経済産業省が進める電力の全面自由化を二〇一六年四月に控え、全国規模の系統(送配電網)運営のITシステムをどこが開発するのか、電力会社、および新電力は固唾を呑んで見守っていた。その最重要案件を日立製作所が競り落としたのである。
事前の予想は違った。広域機関システムは、現行の電力系統利用協議会(ESCJ)の給電連絡システムを引き継ぎつつ、発展的に大規模開発するもので、ESCJのITシステムを手掛けてきた東芝が有利とみられていた。日立はその下馬評を、東芝の四十億円の入札価格に対し、半値以下の十六億円の安値札でひっくり返したのだ。今後、数千億円と見込まれる電力自由化のIT需要の中でも、最重要案件を逃した東芝の打撃は計り知れない。しかし……。
「日立でよかった。東芝が落札していたら、広域機関は経産省主導の色彩が一段と強くなっていただろう」
新電力のある幹部は安堵の声を上げる。東芝と親密な・・・