三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

《世界のキーパーソン》アル・シャープトン(米国公民権運動活動家)

黒人暴動をなだめる「政府特使」

2014年9月号

 米ミズーリ州セントルイス郊外のファーガソンで、高校を卒業したばかりの十八歳の黒人少年が、白人警官に射殺された。怒りが渦巻く地元の黒人社会で、意外な人物がなだめ役に回った。かつてはこうした場面で、扇動者を演じていたアル・シャープトンである。

 キング牧師より二十五歳下、ジェシー・ジャクソン牧師より十三歳下で、今年六十歳になる。ニューヨーク・ブルックリン生まれ。父親が母親を捨てて別の女性の元に走り、一家は生活保護を受けた。若くして公民権運動に加わり、大先達にならって牧師になったが、手法ははるかに過激だった。

 警察の暴力や白人によるリンチ事件があれば、現地に真っ先に駆けつけ、黒人たちの抗議デモを率いた。デモが暴動に発展することもしばしば。「武闘派」時代の彼は、体重百三十キロを超えていた。太鼓腹に、ふてぶてしい面構え、マシンガンのように飛び出す米社会批判は、白人の格好の憎まれ役でもあった。

 ところが今の体重は六十キロ弱。過去三年間、ベジタリアン(菜食主義者)を貫き、トレーニングで半分以下に落とした。白髪が交じり、ダブルのス・・・